もどってみる。
 

インプレッション

この道は片道一車線です。路側帯におさまってしまうほど小さい。

 

 

ただの軽トラックですから誰も振り向きません。その辺が同じ情けない小型旧車でもフィアット500あたりと違う。

運転手の視線。

レバーの操作説明は絵で。変なところで凝ってます。

ベンチレーターを開けたところ。

 

 

 

文:あに

 世の中には不便を好む変わり者も居るわけで、われわれ兄弟はこの部類に入ると言えるでしょう。まごうことなき旧車で、便利な機能がまるで無いマツダ・ニューポーターキャブ(以下ポーター)に乗っているとこんなことを考えます。

 確かに軽トラックと言う部類に入っているポーターですが荷物を運ぶ軽便な車両と言う根本以外は現行の軽トラックとはマッタクの別物です。少なくとも以前トヨタレンタカーで借りたダイハツ・ハイゼットと比べると。

 まずもって始動時にチョークを引いてクランキング、後に愚図らない程度までチョークを戻して暖気するという前時代的な儀式を執り行わなければなりません。始動性自体はインジェクション並に良好ですが、始動後速発車というのはいささかかわいそうです。エンジンは旧規格に準拠した水冷2気筒4サイクルガソリンエンジンで、2サイクルでないのがせめてもの救いです。なぜか三菱製のバルカンIIエンジンを搭載。OHCなのでそれなりに吹けあがります。トルクにモーレツな山があるわけではないごくごく素直な回り方をして、おそらく2,500から3,000回転位(回転計が無いので分からないのです)で力が出ている感じです。エンジンの非力感(?)はモーターサイクルに似ているかもしれません。
 空荷状態では1速はほとんどタイヤを転がすだけと言った感じであっという間に吹けてしまいます。対して2速以降はそれなりの守備範囲を持ちます。20km/h超で3速へ、40km/h超で4速位がちょうどいい感じです。4速に入ってしまうと後はエンジン勝負になります。実用限界速度は大体80km/hでしょう。大雑把なメーターの75km/hあたりを越えるとキャビン内はかなりの騒音でラジオのボリュームをあげる必要があります。
 こんなんばっかりで良いことがまるでないようですが、ホントなんだから仕方がない(笑)。

 ステアリングもなかなかのものです。パワーアシストなしでそれなりのしっかり感を期待していたのですが、軽い!というかなんだかグニャグニャした感じのとても面白い感触です。そしてまっすぐ進みません。落ち着きの無い脚まわりと合わせてなんとも言えない操車感をかもし出しています。カーブでの姿勢はアンダーステアとかそんな生易しいものではなくむしろ膨らみ放題とか搭乗者はリーンイン姿勢とかそういう表現の方がふさわしいでしょう。10インチの分厚いタイヤと板ばねで乗っかっているだけの後ろ足の恩恵(?)で旋回姿勢はつねにおっとっとっとと言う感じです。
ブレーキは当然4輪ドラムで、かなりの踏力と少しの余裕を必要とします。ポーターで走った後、おとと所有のプジョー405にそのままの感覚で乗ると停止線の手前で止まってしまいます。倍力装置は付いているのか疑問なところです。「スピードを出すな」という親心仕様かもしれません。アブナイです。もう少し利いてくれるといいのですが。

 各ギアをビンビンに引っ張りながら切れるんだか切れないんだか良く分からないステアリングを右へ左へ。街中を転がしているうちに思い当たりました。

ああ、Apeに似てるかも。

 ピアジオ(べスパのメーカー)のオート3輪にどことなく似ているのです。最初は「2CVみたい」とか言ってたんですが,2CVはもっと良く出来てます(笑)。シートはそれなりに柔らかいのですがどうもやっぱり役不足なようで長い間乗っていると腰が痛くなります。これはカインズホームで買ってきた小柄なざぶとんで解決しました。 ダッシュボードの上は棚になっていて大変便利なのですが、1速でかっくん発進してしまうと上のものが吹き飛んでくるのであまりごろごろしたものを置くのはうまくなさそうです。
ぺらぺらなボディのおかげで室内は存外広く、明るいです。足元のスペースも広いです。法律の問題はともかくとして物理的には3人乗ることも可能だと思います。
 閉口するのはエンジンの騒音と寒い室内です。ヒーターはあるのですがエンジンが小さいからか生温い風が出るだけです。この生温い風は油断するとすぐ曇ってしまうウインドスクリーンにもつながっていると思います。夏は三角窓とベンチレーターで涼しいでしょうが走っていないと煉獄キャビンのヘルマッシーンになるのは想像に難くありません。おおこわ。

 こんなにもアレなポーターですが、不思議と苦にならないんです。すっとぼけた顔立ちとあんまりにも簡素な造りが楽しい。ターボとかCVTとか、どんどん進化している軽自動車ですが、今なおその根っこの部分に触れることのできる数少ない車のうちのひとつだと思います。旧いけどな。

チャンスがあったら、近所一回りでもしてみると面白いよ。

 

 

もどるしかあるまい。

製作:内燃機関兄弟